風の国






自分がデザインしたパズルがオランダへと旅立った。


オランダと聞いて少し親近感が湧いた。

それもそのはず…
そのパズルをデザインするほんの少し前、私はその国を訪れていた。


束の間の国境越えとして、初めて一人で訪れた街
それがアムステルダムだった。








出発の日、アムステルダム行きの列車の座席でしばらく揺られていると、

これから向かう土地で何をするのかを、実は全く決められていないことに気付いた。


どこへでも行ける自由と予定の無いことへの不安が入り混じる

この旅独特の感覚が妙に心地よかった。
 



その日は曇り、時節眩いほどの晴れ間。

到着して駅を出ると、少し迷ってからトラムに飛び乗る…

広場でトラムから降りると
そこから先へは歩いて行くことに決めた…





石畳の道の至る所に枯れた花びらが落ちていて、

煉瓦の狭い街並みをトラムが走る その傍らを自転車も走る

その度に風が花びらを吹き上がらせる

花びらが路地の片隅で小さく円を描いて舞った。
 

まるで風の流れが見えているかのようだった…

 


ライツェ広場にて、なんとか注文を終え少し早目のディナー
旅の目線



私はこの日この場所で、初めての経験を沢山した。

異国での初めてのカフェ

初めてのレストラン

ニシンの塩漬けも試した。



あの角を曲がると…今度は一体どんな景色が広がっているのだろうか?

ただ街を歩いているだけなのに、とても新鮮な気持ちがした。






私のパズルも少なからずこの国を経由して、

そこからさらにまた別の国へと辿り着くのだろう…







旅の途上


車窓から移り変わる風景をぼんやりと眺めていると、

都心部から離れ徐々に田舎へと近づくにつれ

観光地でもなく、名前も知らないその土地の

どこでもない村や畑に心惹かれる瞬間がある。




ひとつの古びた小さな家

その庭先からのびる一本の小道が林に続いている

その小道を子供が自転車で走りながら林の奥へと消えていく



たったそれだけの光景なのだが、あの林の奥へ自分も足を踏み入れてみたいと感じる。


しかし、その場所に私は決して行くことができない。

すぐにまた景色が流れる…


心惹かれる場所 それは同時に私にとって永遠に辿り着くことのできない
憧れの世界なのだ。

私のパズルの幾つかは、きっと私の憧れた知らない土地へ到着することだろう。


私は旅をする。

パズルも旅をする。


それは都会であったり、ある時は港であったり、


そして、またある時は“どこでもない林”の奥であったりするのかもしれない…







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